薬剤性EDとは|原因となる薬や治療法について解説

薬剤性EDとは、特定の薬の使用によって勃起機能の低下が引き起こされた状態を指します。 自分が飲んでる薬が該当しているか不安に思う方もいるでしょう。 薬剤性EDでは、勃起が満足に維持できないため、一時的に性生活に支障が出てしまいます。 ただ、薬剤の調節やその他のED治療薬の使用によって改善できるかもしれません。 この記事では、薬剤性EDの原因やなりやすい薬、治療法について解説します。

【この記事でわかること】

  • 薬剤性EDの原因
  • 薬剤性EDになりやすい薬
  • 薬剤性EDを治す方法

薬剤性EDについて理解を深めて、性生活の手助けになれば幸いです。

薬剤性EDとは

薬剤性EDは、特定の薬剤の服用が原因で勃起機能が低下するEDです。

そもそも、EDの定義は「満足な性行為をおこなうのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」を指します。
EDかどうか調べる方法にはIIEF-5(国際勃起機能スコア5)があり、セルフチェックが可能です。
過去6ヶ月の間に該当する回答を選びます。

勃起を維持する自信の程度はどれくらいありましたか?
  1. 1 非常に低い
  2. 2 低い
  3. 3 普通
  4. 4 高い
  5. 5 非常に高い
性的刺激によって勃起した時、どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりましたか?
  1. 1 ほとんど、又は全くならなかった
  2. 2 たまに(半分よりかなり低い頻度)
  3. 3 時々なった(ほぼ半分の頻度)
  4. 4 しばしばなった(半分よりかなり高い頻度)
  5. 5 ほぼいつも、又はいつもなった
性交の際、挿入後にどれくらいの頻度で勃起を維持できましたか?
  1. 1 ほとんど、又は全く維持できなかった
  2. 2 たまに維持できた(半分よりかなり低い頻度)
  3. 3 時々維持できた(ほぼ半分の頻度)
  4. 4 しばしば維持できた(半分よりかなり高い頻度)
  5. 5 ほぼいつも、又はいつも維持できた
性交の際、性交を終了するまで勃起を維持するのはどれくらい困難でしたか?
  1. 1きわめて困難だったほとんど、又は全く維持できなかった
  2. 2 たまに維持できた(半分よりかなり低い頻度)
  3. 3 時々維持できた(ほぼ半分の頻度)
  4. 4 しばしば維持できた(半分よりかなり高い頻度)
  5. 5 ほぼいつも、又はいつも維持できた
性交を試みた時、どれくらいの頻度で性交に満足できましたか?
  1. 1 ほとんど、又は全く満足できなかった
  2. 2 たまに満足できた(半分よりかなり低い頻度)
  3. 3 時々満足できた(ほぼ半分の頻度)
  4. 4 しばしば満足できた(半分よりかなり高い頻度)
  5. 5 ほぼいつも、又はいつも満足できた

各項目の数値を合計すると、以下のどの範囲に入るかでEDの程度を推測できます。

  • 重症ED:5~7 点
  • 中等症ED:8~11 点
  • 軽症~中等症ED:12~16 点
  • 軽症ED:17~21 点
  • EDではない:22~25 点

あくまで、EDのチェックリストのため薬剤性EDに当てはまっているかどうかは、判断できません。
薬剤性EDの場合、薬の中止や変更で改善が見られますが、その他の原因が関係していると治療の効果が出ない場合も多いです。
正しく治療するためにも、EDの原因については専門医に確認するようにしましょう。

薬剤性EDの3つの原因

勃起は、以下3つの要素が関係しています。

  • 神経伝達物質
  • ホルモン
  • 血管

薬剤性EDでは薬剤により神経や血管との関係が阻害されて、勃起機能が低下します。
それぞれ見ていきましょう。

神経伝達物質への影響

神経伝達物質は、神経細胞同士の情報をやりとりする化学物質です。
性的な興奮を感じると、脳から神経を通って、陰茎海綿体という陰茎にあるスポンジのような組織に信号が伝わります。
信号を受け取ると、陰茎海綿体の細胞がドーパミンや一酸化窒素などの神経伝達物質を放出し、血管を広げる物質を作ります。
血管が拡張すると、陰茎海綿体に血液が大量に流れ込み、陰茎が硬くなって勃起するのです。

神経伝達物質は、主に3つのものが関係しています。

神経伝達物質 主な役割
セロトニン ・性欲抑制

・射精に関与

ドーパミン ・性欲亢進

・快感に関与

一酸化窒素 ・血管拡張

・筋肉を緩ませる

上記の神経伝達物質は、複雑に関係して勃起機能を調節しています。
そのため、服用している薬の影響で神経伝達物質のバランスが崩れると、薬剤性EDを発症します。

ホルモンへの影響

男性ホルモンであるテストステロンは薬によって減少すると、性欲や勃起機能の低下につながる可能性があります。
たとえば、抗アンドロゲン薬(AGAや前立腺がんの治療に使われる)をはじめとする一部の薬剤は、テストステロンの働きを抑制しEDを引き起こす可能性があります。
また、プロラクチンというホルモンも、性機能に影響を与えます。
本来、プロラクチンは乳汁を促すホルモンですが、男性でも分泌され、過剰に分泌されると、性欲低下や勃起機能の低下につながります。
このように、ホルモンバランスは勃起機能や性欲を維持するために大切です。

血管への影響

前述した通り、勃起は陰茎海綿体に血液が流れ込み、血管が拡張する現象です。
勃起が起こる過程には、一酸化窒素の生成と筋肉の緩みが深く関わっています。
中でも、一酸化窒素は血管の内側を覆っている薄い膜のような細胞(血管内皮細胞)から分泌されます。
筋肉を緩ませて血管を広げさせ、陰茎海綿体に血液を満たすように促しているのです。
しかし、一部の薬剤が血管の広がりを邪魔して勃起機能に影響を及ぼすのです。

薬剤性EDになりやすい薬

薬剤性EDになりやすい薬は、以下のとおりです。

  • 抗うつ薬
  • 降圧剤
  • 前立腺肥大症治療薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • 脂質異常症治療薬

それぞれの薬について解説します。

抗うつ薬とEDの関係

うつ病や不安障害の治療に広く使用されている選択的セロトニン再取り込み阻害薬(以下SSRI)は、性機能に影響を及ぼし、薬剤性EDを起こす可能性がある薬です。
前述の通り、セロトニンの増加は性的興奮や性欲を低下させ、勃起の維持が難しくなります。
とくに、一般的なSSRIの一つ「パロキセチン」は、性機能障害の発生率が比較的高いと考えられています。

EDをはじめとした性機能障害は、薬を飲み始めてから1ヶ月以内にあらわれる傾向が強いです。
一方、比較的新しい抗うつ薬であるミルタザピンは、性機能障害の発生率が低いという点で知られています。

抗ヒスタミン薬とEDの関係

抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹などのアレルギー症状の治療に広く使われる薬剤です。抗ヒスタミン薬には、抗コリン作用という眠気や口の渇きといった副作用が生じることがあり、勃起機能にも影響が出る可能性があります。
勃起機能をはじめとした性機能への影響や代表的な薬を以下の表にまとめました。

代表的な薬 性機能への影響
第1世代抗ヒスタミン薬 ヒドロキシジン

クロルフェニラミン

出やすい
第2世代抗ヒスタミン薬 ロラタジン

フェキソフェナジン

出にくい

性機能への影響が比較的出やすい第一世代抗ヒスタミン薬は、市販の風邪薬にもよく使われています。気になる症状が出た際は、医師へ相談してみてください。

降圧剤とEDの関係

高血圧の治療に使う降圧剤は、種類によってはEDのリスクを高める可能性があります。
中でも、以下の3つは、勃起機能に影響を与えると言われています。

薬剤 特徴
利尿薬 体内の余分な水分を尿として排出し、血液量を減らして血圧を下げる
β遮断薬 心臓の働きを抑制し、血管を広げて血圧を下げる
カルシウム拮抗薬 血管を拡張させて心臓の負担を減らし、血圧を下げる

なお、血管の働きを調整するα遮断薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、勃起機能への影響はないケースがほとんどです。
ただし、高血圧は病気自体がEDのリスクファクターのため、治療薬ではなく高血圧自体がEDを引き起こす可能性もあります。
勃起機能の低下を感じた場合は、自己判断で中止せずに主治医と相談するようにしましょう。

脂質異常症の治療薬とEDの関係

脂質異常症の治療薬であるスタチン系薬剤(ロスバスタチン、プラバスタチンなど)は、勃起機能に影響する男性ホルモン「テストステロン」の産生を低下させる可能性があります。
テストステロンは、コレステロールから作られています。
治療薬によってコレステロール生成が抑え込まれると、テストステロンが作られにくいのです。
ただし、スタチン系薬剤の使用とED発症の関連性について、明確な関係は示されていません。

前立腺肥大症やAGA治療薬とEDの関係

前立腺肥大症やAGAの治療薬を飲むと、勃起する力が弱まる可能性があります。
これは、前立腺肥大症やAGAの治療薬が、男性の体の機能をつかさどるホルモン(ジヒドロテストステロン)の働きを邪魔してしまうためです。

さらに、最近の研究では、ジヒドロテストステロンが減ると体内に悪いものが溜まりやすくなり、勃起に関わる部分が炎症を起こす結果、勃起する力が弱くなる可能性があるといわれています。

薬剤性EDの2つの治し方

薬剤性EDを治すには、原因となっている薬剤の変更や中止、ED治療薬を使用する方法があります。具体的には、以下のとおりです。

  • 原因となっている薬剤の変更・中止
  • ED治療薬の使用

ここからは、上記2つのポイントを詳しく解説します。

原因となっている薬剤の変更・中止

薬剤性EDが疑われる場合、原因となっている薬剤の変更や中止をすると改善する可能性があります。
たとえば、高血圧の薬は種類によってEDの発生率が違うため、別の種類の高血圧の薬に変えるとEDの改善が期待できます。
同じように、うつ病の薬やアレルギーの薬も、種類を変えるとEDが改善されるかもしれません。

ただし、もともとある疾患の治療が最優先です。
とくに高血圧やうつ病などの治療薬を自己判断で中止するのは非常に危険なため、行わないようにしてください。

ED治療薬の使用

原因となる薬剤の変更や中止が難しい場合、ED治療薬との併用を検討できます。
現在、日本で使用可能な主なED治療薬は、PDE5阻害薬と呼ばれる以下の3種類とそのジェネリック医薬品です。

3種類の作用機序は同じですが、効果の発現時間や持続時間に特徴があり、ライフスタイルに合わせて選択できます。
自分の生活を振り返りながら、薬剤について医師と相談してください。

薬剤名 特徴 投与時間、効果最大時間、

食事や飲酒の影響

バイアグラ

(シルデナフィル)

  • 1999年発売
  • PDE5阻害薬の代表格
  • 効果発現が比較的早い
  • 投与時間:性行為の1~3時間前
  • 効果持続時間:約4時間
  • 食事の影響:普通食、高脂肪食で効果低下
  • 飲酒の影響:飲みすぎで効果低下
レビトラ

(バルデナフィル)

  • バイアグラについで登場
  • 人によっては性行為10分前の服用でも効果がある
  • 現在の発売はジェネリック医薬品のみ
  • 投与時間:性行為の1~3時間前(10分前でも2割の人が有効)
  • 効果持続時間:約4時間
  • 食事の影響:高脂肪食で効果低下
  • 飲酒の影響:飲みすぎで効果低下
シアリス

(タダラフィル)

  • 効果持続時間が最も長い
  • 投与時間:性行為の1時間~1日半前(いつでも好きな時に)
  • 効果持続時間:36時間
  • 食事の影響:なし
  • 飲酒の影響:飲みすぎで効果低下

どの薬も正式な飲み方は「性行為の約1時間前」ですが、薬の特徴によって効果的な服用タイミングはやや違いがあります。
ただし、性的刺激があった場合にのみ効果を発揮するため、ED治療薬に催淫作用や性欲増進作用はありません。

ED治療薬は、硝酸剤や一酸化窒素供与剤(ニトログリセリン・硝酸イソソルビドなど)など同時に服用できない薬もあります。
服用している薬がある人は、必ず医師へ伝えるようにしましょう。

薬剤性EDと他のEDの違い

EDには薬剤性EDの他に、器質性ED心因性EDの3つがあります。
それぞれの原因や特徴を表で比較しましょう。

EDの種類 原因 症状 治療法
薬剤性ED 服用している薬の副作用 ・勃起不全

・性欲減退

・薬の変更、減量

・ED治療薬の併用

・生活習慣の改善

器質性ED ・動脈硬化

・糖尿病

・高血圧

など身体的な疾患

・勃起不全

・勃起力の低下

・射精障害など

・原因となる疾患の治療

・生活習慣の改善

・ED治療薬

心因性ED ・ストレス

・不安

・過去のトラウマ

など心理的な要因

・勃起不全

・性欲減退

・早漏

・勃起時の痛みなど

・心理療法

・性教育

・カップルセラピー

・ED治療薬

薬剤性EDの最大の特徴は、原因となる薬を飲み始めてから症状の発症するまでに、はっきりとした関連性が見られる点です。
他のEDは、基礎疾患に生じる血管、神経の障害や心理面の影響で起こるため、長期的な治療やアプローチが必要となります。

なお、器質性と心因性が合わさった「混合性ED」という種類もあります。

薬剤性EDに関するよくある質問

薬剤性EDに関するよくある質問について回答します。

  • ED治療薬と精神薬は一緒に飲んでも大丈夫ですか?
  • 降圧剤でEDになる人はいますか?
  • 薬の副作用で射精障害になるとはどういうことですか?
  • 薬剤性EDは自力で治せますか?

同じような悩みを抱えている方は、解決の糸口が見つかるかもしれません。

ED治療薬と精神薬は一緒に飲んでも大丈夫ですか?

ED治療薬と多くの抗精神病薬は、適切な管理のもとで併用が可能です。

 

うつ病や不安障害の治療に使用されるSSRIといった抗うつ薬は、ED治療薬の併用による重大な副作用は報告されていません。

 

一方、統合失調症などの治療に使用される一部の抗精神病薬は、血圧低下作用があるためED治療薬との併用に注意が必要な場合があります。

 

いずれの場合も自己判断での服用は危険です。ED治療薬の服用を希望する際は、事前に主治医に相談するようにしましょう。

降圧剤でEDになる人はいますか?

降圧剤が原因で、EDになる可能性があります。

 

ただし、高血圧自体もEDのリスク因子のため、適切な高血圧治療はEDの予防につながる可能性があります。

 

降圧剤による性機能への影響が気になる場合は、自己判断せずに医師へ相談しましょう。

 

薬の副作用で射精障害になるとはどういうことですか?

薬の副作用による射精障害は、精液が膀胱の方に逆流して射精ができない逆行性射精や精嚢(せいのう)・精管の収縮がうまくいかなくなる現象です。

 

中でも、前立腺肥大や高血圧の治療薬のα遮断薬や抗うつ薬のSSRIで射精障害が報告されていますが、完全なメカニズムは解明されていません。

 

なお、ED治療薬は勃起に対しての治療薬であり、射精障害に対しては効果がありません。

薬剤性EDは自力で治せますか?

薬剤性EDは、原因となる薬剤の使用と密接に関係しており、自己調整をすると、もともとある疾患が悪化する可能性があります。

 

また、ED治療薬は海外のサイトを通じて個人輸入もできますが、日本では認可されていない薬剤や安全性が確保されていません。

 

そのため、医師の診察を受けてから治療するようにしてください

まとめ

この記事では、薬剤性EDについて解説しました。

【この記事のまとめ】

  • 薬剤性EDは抗うつ薬や降圧剤などで起こる可能性がある
  • 薬剤性EDを治すには、薬剤の変更・中止、ED治療薬の内服がある
  • 自己判断での薬の調整はせず、医師に相談する

勃起は神経や血管などが複雑に関係して起こりますが、薬剤によって勃起機能が阻害されると薬剤性EDが起こります。
中でも、降圧剤や抗うつ薬でEDの報告がされており、悩んでいる方も多いです。
薬剤性EDを治すためには、薬剤を変更・中止するか、ED治療薬の内服をする必要があります。

しかし、高血圧やうつ病は病気自体がEDのリスク因子のため、勃起機能の低下が持病によるものなのか、薬の副作用なのかは医師の判断が必要です。
自己判断で薬剤の変更や中止をすると、体調の変化や場合によっては命に関わるため、必ず医師に相談したうえでおこないましょう。